「ガ~ン!」のあと「どよ~ん・・・」という心のネガティブ余韻が そうねぇ・・・10秒ほど闇の中で続いた あたしはこの雰囲気をこの状態を密かに予想していた そりゃそうだ わんこ一匹と小さいネコちゃん一匹だったのがわんこが一匹増え またもう一匹増えるってんだから だから 彼があたしをなだめに入るか 話し合いが長引くか それともすげなく約束は守れない と あっさり言うかどうか なんとなく考えてはいたんだけど 家主さんやっと言葉を発した ”確かに約束した 覚えてるよ”と そして続けてこう言った ”約束は約束だ 土曜日行こう”と 諦めは早かった 潔かった しかしそれから土曜日までの数日間 たとえば週末の買い出しの話しになったりすると ”土曜日はポルト・ドュ・ヴェルサイユに行くから買い物はその前に急いですまさなくちゃ”と苦笑いしながら言ったり 何かにつけて苦笑いしながら土曜日のポルト・ドュ・ヴェルサイユ行きのことを口にした あたしは気の毒に思ったがかける言葉も慰めの言葉も見つからなった そして土曜日はやって来た 駅まで車で行き電車に乗り換えた この時のポルト・ドュ・ヴェルサイユはチケットを売り出すような前回来た時のキュイジネ祭りのような大きな展示はないようで あたしたちはスイスイスイスイ目的の「Noel d'Assistance aux Animaux」の会場に行けちゃった♪ この催しは無料で ドアを開けると広~いガラ~ンとした倉庫みたいな会場にゲージが並べらていた 見に来てる人結構いた 一歩入るともうすでに飼い主さんが決まった子たちが多いのか空のゲージが横一列に並んでいたのだが まっすぐ前のゲージの中に一匹だけ クリーム色の中型犬の子がまるで取り残されたかのように1人ぽつんと座っていた あたしたちはここで初めて出会うその子をしばらくゲージにくっついて眺めた おいで とやってもただただ怯えた瞳でこちらを見つめるだけで寄っては来なかった 毛並みの生え方がちょっと変わっていた 耳の下から首の後ろの背側あたりまでだけに たてがみのような長い毛が綺麗に生えていた なんかちょっとユニコーンみたい でも相変わらず全く寄ってこなくて 綺麗な子だねぇ なんて話しながら他のわんこたちが入ってるゲージが並ぶ方へ移動した 皆中型犬もしくは大型犬だった 小さい子は早くに引き取り手が決まっていったのかもしれない 人懐っこくてずっとしっぽをぶんぶん振ってる子もいれば すぐに吠える子もいれば 疲れたような顔で床に伏せてる子もいた 人懐っこい子にはやっぱり誰かが立ち止って係の人に質問をしていた でもこれだけいるとなんだか何が何だかわからなくなってくる・・・向こうのブースはねこちゃんたちコーナーだった とりあえず途中そちらにも行って一周してみた で わんこブースにまた戻ってきた 戻ってきたけどやっぱりどの子がいいかわからないままもとの場所にたどり着いた 着くと最初に見たあのクリーム色の子がいなくなっていた あれ あの子いない 引き取り手決まっちゃったのかなぁ と家主さんとあたし同時に思って話して探してみた すると他のゲージに移されていただけであった 何人かの人がたびたび立ち止ってその子を眺めたけど相変わらず誰にも寄らないので立ち止った人もすぐ他へ移っていった あたしたちはその子の名前や生まれた年が書かれた札を改めて見てみた 名前は「ポルカ」で8歳の女の子であった 坊やと同い年だった 「ポルカ」と言うポーランドの民族ダンス名であるその名前があたしはとっても気にいった でも8歳か とも少し思った それでもなぜかそこからあたしたちは離れられずにいた 家主さんが”係の人を呼んでみようか”と言うのであたしも”そうだね 直接触れてみたい”と答えた 係の人がポルカをゲージから出して連れてきてくれた そっと触れさせてもらった おとなしくて でもやはりずっと怯えた感じの子だった よく見ると目の上と頬に傷跡のようなものがあった 係の人が”この子はね 前の飼い主にしょっちゅう叩かれていたの その傷が未だに残っているの でもとってもいい子よ”と話してくれた ”叩かれていた”と聞いた時 不覚にも涙が出てきてしまった 人間の勝手で飼われもしかしたら勝手で作られたしゃべれないわんこを叩くなんて せつない 悲しい 悔しい ざけんな 家主さんが”この子を引き取ろうか”と言った あたしも”うん”と頷いた
つづく
※写真は恐がりポーちゃん散歩の時は必ずしっぽが下がりまくりの一枚です
でも今では家につくとしっぽを立てて撫で撫でするとぶんぶん振るのだ